『江副浩正』(5)

先週に引き続き、3章の東京大学新聞というところの後半を読んでいきます。

 

前回記した菅原くんとの明るい出会いの他に、彼にとって欠かせないもう一つの明るい出会いがありました。それは、大学2年生の夏のアルバイト委員会でのことです。

東京大学学生新聞会の月収1万円という求人がありました。 当時の入学金3000円、授業料が月500円、日給が良くて240円の時代ですから、月収1万円という数字がいかに破格の数字かがわかります。

このアルバイトの詳しい業務内容は、学生新聞会の広告取りの仕事でした。1万円というのは、歩合制で、広告をもし取ってこれたらの話だったが、可能性があるなら!と彼は挑戦することを決意しました。

学校の周りのカフェやレコード店で小さな突き出し広告をとっても月収1万円にならないと気づいた江副は、 『世の中の動きの中に広告をとるヒントが潜んでいる。新聞をもっと読め。それも下から読むんだ。』という先輩の助言に従い、その日から毎日下から新聞を読みふけりました。

そこに本当にひらめきのヒントがあったのです。新聞のスポーツ面のところで記事と広告が一体化してるのを見つけました。

来たる東大入試 、受験生は誰もが合格者の名前が載る大学受験号の東大新聞を買うものであり、合格者はもちろん、不合格者も悔しさを糧にするために買う人が多かったそうです。そこで、合格者名簿の記事と予備校広告の記事を一体化させるということにひらめきました。予備校回りをすると面白いほどに売れました。

他にも、試験問題を載せ、有名予備校講師が模範解答を解説する広告なども企画し、これも好評で飛ぶように売れたそうです。

そして、江副のおかげで東大新聞の経営は安定しました。歩合制の給料のおかげで、江副の収入は膨らみ月3万にもなっていたそうです。

 

『人間は誰しも成長しようとする性質を持つ』という c.ロジャーズの臨床心理学から影響を受けたものですが、江副はこの経験をきっかけに、自分のひらめいた行動から、自分自身の成長はもちろん、団体を成長させることにも成功し、大きく人生が変わったようです。

 

これらの明るい出会いが、のちの江副浩正の人格を作り出し、リクルートを創設する企業家になったのだと思いました。